入局後2ヶ月で医局辞退を宣言しフリーランス医師、情報発信を軸に現在は活動しています。
今回は医者の職業倫理にまつわるコラムです。
医者のSNS投稿から
下の画像はある外国の方のツイッター内容です。
Misogyny is medieval. Do I have to wear my white coat at all times to deserve the title of "professional"?
Fun, sexy, smart & hard-working can exist in the same space. I can wear swimwear to the beach in my free time & be a competent & compassionate physician at work. #medbikini pic.twitter.com/bWC4tSEVTR— Vera Bajarias, MD (@invinovera) July 24, 2020
この画像からどこか問題はあるでしょうか。
ちなみにこの人の職業はお医者さんです。
こういった女性医師がビキニを着用してSNS投稿をするような行動は「医師としてふさわしくない行為」として批判した論文が2019年12月に出されました。
『外科医によるSNS上での誹謗中傷や政治的発言、更にビキニのような露出度の高い衣服の着用や飲酒の写真を公開する行為は「将来的に患者を失い、他の医師や医療施設の評価にも影響を及ぼすことが実証された」
医療情報誌『The Journal of Vascular Surgery(JVC)より
その結果、「ふさわしくないわけねーだろ!」「性差別だ!」とSNSで医療従事者からのバッシングの嵐が起きました。
もはや20代の若手女医から60代の女性のベテラン医師まで医療従事者が#MedBikiniというハッシュタグをつけ、自ら水着着用でSNS投稿をして、大炎上になり(男性医師からの支持も多数であったそう)
批判をたくさん受けた医療情報誌は公式Twitterで謝罪し、論文を撤回するまでに至ったという顛末(てんまつ)です。
医者は生きづらい?
この件が2020年10月なんでまだ一年も経ってません。
たしかにビキニを着てSNS投稿するのは診療とか技術とまったく関係ない話です。
他のプロフェッショナルな職種でこういう投稿をしている人はザラにいます。
しかし、なぜ女性医師に限ってプロ意識が欠けた行動となってしまうのでしょう?
論文はもう撤回されているので後の祭りなんですけど、大炎上したという結果からは女性医師の蔑視問題を露呈するきっかけになってしまったんでしょうね。
世が医者に求めること
日本社会での女医の方のことを考えても、まだ環境的に仕事しやすいとはいえないだろうなと思います。
昔よりずいぶん良くなったんでしょうけど。
この話の焦点は女性医師への蔑視だったわけですが、世の中にはまだまだ医者への職業倫理の偏見が溢れていると思います。
「医者はこうあるべき」
「医者は残業して当たり前」
「医者はくたばるまで働いて当たり前」
いまだにこういう思想をもった人は多いです。
医者の中にも持っている人がいて、そういった価値観を押し付けてくるような人もいます。
「なぜ?」と聞いても「お医者さんだから」という答えが返ってきます。
しかし、それは答えになっていません。
医者という同じ人間に世間は、普通の人間以上のことをどれほど求めているのでしょうか
医療の価値観の変化は遅め
リモートワーク、残業の意味、オンライン授業、大学や学校に行く意味はあるのかという疑問すらでてきていること。
最近では、今まで当たり前にあったことを「本当に必要か?」という視点で見直されてきていることが多いと感じています。
そういった社会の背景と対比してしまうと医療業界の価値観やシステムの更新速度が、相対的にすごく遅く見えてしまう時があります。
いまだに人々が「医者だけはこうあるべき」みたいな古典的な価値観を頑なにホールドしているのは不自然なんじゃないですかね。
たしかに、命や健康に直結する仕事こそしますし、責任は伴います。
診療行為には厳格さを常に持って臨むべきでしょうけど、医者も同じ人間ですし、何より求めるべきは医者としての像や労働時間ではなく仕事の質の方です。
医者という社会に必要な職業を、変な価値観で必要以上に働きづらくするのはいかがなものかな、と思います。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
Medbikiniの一件から医師の職業倫理に触れるきっかけになっていただければ幸いです。
今回は以上になります。
参考:
医者がビキニ着て悪いか
ビキニ姿の写真、医師たちが一斉に投稿。「医師として不適切」とする論文に“体を張って”抗議