この記事ではフィナステリドの副作用について取り扱っています。
検証もとは最新版2017年ガイドライン、その根拠となった論文などです。
フィナステリドはAGA治療、その中でも内科的治療における薬剤の一つです。
インターネット、広告を通じて、AGA(男性型脱毛症)の存在が知られ始めており、治療も検討する人も増えてきたのではないでしょうか?
しかし、いざ治療に踏み切ろうとして見ても副作用がやはり気になるものです。
ここではあえてフィナステリド服用のメリット・デメリットのバランスは副作用の受け止め方によって全く変わってくるということを強調した上で、肝機能障害・性機能への影響を主に副作用について検証していこうと思います。
ちなみに結論から言うと性機能障害について一考すべき、です。
※あくまでこの記事は検証というテーマのものであり、注意喚起等のものではありませんので、ご自身で冷静に判断してください。
フィナステリドのメリット・デメリットのバランスは人次第
メリット
フィナステリドの最大のメリットは髪が復活し、悩みから解き放たれることにあります。
AGAは絶対に直さなければいけない病気ではありません。
しかし、AGAによって生じる悩みはかなり深刻だと思うのです。
本人自身は何も悪いことはしてないにも関わらず
若い時期から「なぜ自分は他の人と違うんだろう」と考え始め
自信がなくなり始め、悪くすると人間関係・人生にさえ悪影響を与えます。
そして、その根本の原因は放置していても一向に解決しません。
毎日鏡でいやでも目に入ってしまうものでしょう。
こういった、放っておいても解決しない悩みを根本から助けてくれる可能性があることがフィナステリドのメリットです。
デメリット
一方でデメリットですが
・副作用
・金銭問題
・服用管理
・服薬しているという社会的な目
などが挙げられます。
新たに健康問題が出現した際に金銭が再度必要になることを考えると、明らかに副作用がデメリットの中で大きいですね。
副作用、すなわち、健康問題です。
体はどんなものよりも大切な財産ですから、副作用をどう受け止めるかでデメリットの重さは変わってきます。
したがって、フィナステリド服用のメリット・デメリットのバランスは副作用の受け止め方によって大きく変わってくるといえるでしょう。
フィナステリドの効果の信頼度
効果の信頼度ですが、更新された2017年度ガイドラインでも、推奨度Aと今現在のAGA治療における最も信頼に足る選択肢となっています。
その根拠も、ガイドラインからはエビデンスレベルⅠのシステマティックレビューのデータを基にして有効であると判断していることがわかります。
エビデンスレベルとは
研究の信頼度を表します。
Ⅰ〜Ⅵの段階があり、Ⅰに近づくほど信頼度は上がっていきます。
フィナステリド投与期間
効果発現までの期間が6ヶ月と比較的長く、継続していくことを考えると実際の投与期間はそれよりずっと長くなり、年数単位での投与も考慮されます。
それを思えば、普通に考えて副作用について心配になるのも無理はないと思われます。
フィナステリド副作用の大別
副作用は以下のように大きく分けることができます。
◼︎肝機能障害
◼︎生殖器影響
◼︎ポストフィナステリド症候群
◼︎過敏症
◼︎血液検査データへの影響
◼︎他
今回は、この中でも肝機能障害と生殖器への影響を取り上げていきます。
肝機能障害
沈黙の臓器と呼ばれる肝臓の機能は体内物質の代謝・解毒等があり、その機能の障害は重大な副作用であるといえます。
頻度しては添付文書上では943例中2例(0.2%)
計算上はおよそ使用者500人に一人はでるということですね。
ガイドライン上では頻度は不明、まれに肝機能障害が現れることがあるとされています。
「まれ」というのはどの程度のものかはわかりませんが・・・。
高血圧の方へのアムロジピンという、とてもありふれたお薬があり、添付文書上では頻度不明の肝機能障害の記載がありますが、こちらの薬で肝機能障害が疑われた方は経験上はいなかったように思います。
「頻度不明」ほどの確率の副作用であれば、臨床的には使用をためらうほどではない印象を抱かれるのではないでしょうか。
生殖器への影響
一方で性ホルモン系の薬であるため、高血圧の薬とは違い、生殖器への影響も考慮されます。
生殖器への影響は、性行為活動や男性不妊の観点からも重要です。
ガイドライン上では「0.2 mg/日 から 1 mg/日に移行した患者,あるいは非投与から 1 mg/日に移行した患者 で性機能に関する副作用はなく,非投与から 1 mg/ 日に移行した患者で 1 例ずつ出現した」との記載があります。
これ矛盾しちゃってますよね。多分間違って記載してますね^^;
その発言のもとの研究結果は
エビデンスレベルⅢ、300人弱の「日本人」を3年間対象とした研究に記載されていて
「長期投与試験においても副作用発現率の増加傾向は認められず,フィナステリドの安全性が確認された」という結論があります。
そのため、この研究では有意ととれる副作用の発生はなかったということでしょう。
一方で、懸念する情報があります。
エビデンスレベルⅠのシステマティックレビューでは、「性機能障害の相対危険度1.39(95%CI信頼期間,0.99~1.95)でプラセボ群より上昇」とあります。
エビデンスレベルⅠが最も信頼度が高いので、こちらの研究結果の方が信頼度が上ですが、これは相対危険度1.39という数字をどう捉えるかにもよるでしょう。
相対危険度とは
『リスク要因がふりかかることによって、ある物事が起こる確率が何倍になるのか』
を示すものなので
この1.39という数字は
本来自然に起こるはずの性機能障害の可能性が1.39倍になるであろうことを示しているのです。
この数値、あなたはどう捉えますか?
そして同論文では結論として「性機能障害のリスクが増加することを示唆する」と締めくくってます。
また、男性不妊には精液の性質も関わってきますが
精液の質に関しては添付文書からは投与中止後に改善したとの報告があるとのことです。
まとめ
フィナステリドの副作用、その中でも、肝機能障害と生殖器影響について少し検証してみました。
いずれもガイドライン上で問題とされないほどのものとして扱われていることはわかりました。
ただし、生殖器への影響は
システマティックレビューでの大規模な研究と
より規模が小さい日本での研究とでは見解に相違があるようにもとれました。
薬剤投与をする上での最低限の確率での副作用は付きまといます。
定期的な血液検査や診察を行なって、必要とあれば、中止を検討するというのが、AGAの悩みを最大限小さくする選択の一つではないでしょうか。
他の副作用についても取り上げていきたいと思います。
出典:
プロペシア®錠 安全性|MSD Connectwww.msdconnect.jp › products › propecia › safe
男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年度版
男性型脱毛症の内科的治療https://jsrt-tohoku.jp/cms/wp-content/uploads/2017/05/227ccfe36e3ef0e472dd1c0509a04368.pdf
フィナステリド添付文書
相対危険 | 疫学用語の基礎知識 - 日本疫学会jeaweb.jp › glossary › glossary017