この記事は書籍から医者という職業の本質・魅力を探っていく内容です。
世間一般的に「医者はいい、安定している」というけれど、「あなたは医者のことをどれぐらい知っていますか?本当のところどうなんですか?」
こういった疑問に対して長年やっている名医から答えや考えを学ぶという企画です。
ちょくちょくコメントもいれてますが、あしからずです。
心臓血管外科医の方が書いた本なので、命に直結する診療科を念頭に入れた内容です。
こんな方におすすめ
- 熟練の外科医から本質的な意見を参考にしたい人
- 進路に悩んでいる医学生、研修医
簡単な著者紹介
ざっくりとまとめてみました。
著者:渡邊 剛
- 1985年、東京都生まれ。
- 心臓血管外科医、ロボット外科医
- 金沢大学卒業、卒後同大学第一外科入局。
- 経歴;最年少で心臓移植執刀、日本初off-pumpCABG成功、大学教授、学会理事等
- 本著書出版年;2012年
華々しい経歴の方です。
本当の医者の適正とは
大前提
やはり、偏差値が高いことをきっかけに医学部に入ろうとするのは医者の本質的にはそぐわないようです。
「自分は偏差値がいいから医学部に入った」とか「この医学部なら入れそうな成績だったから、医学部に入った」という学生は、医者になってからあまり使いものになりません。
「医者になる人に知っておいてほしいこと」
「偏差値で医学部に受かりそうだったから、なんとなく医学部に入りました」という主体性のない学生は、医学部合格時点までは、ハッピーかもしれませんが、その後に待ち受けているのは誰からも相手にしてもらえないような生活
「医者になる人に知っておいてほしいこと」
著書の中では職場のロッカーの前で「どうして自分たちは医者になったのか」と嘆き合う人がいるという現状も描かれています。
これは、こういった本を書いたどの先生も指摘していますね。
他の著書でも取り上げられているところをみると、偏差値重視で医学部に入学する方は少なくないということなんでしょう。
怒鳴られることを覚悟している人
命に直結している以上、怒鳴られるのが前提の職業
とされています。
「そういった覚悟があるか」を自分に問いかけて道を進めるかどうかも重要です。
まあただ怒鳴られるのも当たり前って冷静にすごいことですよね。
そりゃー誰だって怒鳴られたくないですよ。
というか、怒鳴るような事態になる≒患者さんに不利益が被っている状態だから、そういったリスクに対して組織的にも先手を打った方がいいような。
今の時代の現場を見た身からすると、ハラスメントに関わりますからそういったことは横行しているようには見えませんでしたし、仕事的に優秀であれば怒鳴られることは減るんでしょうけども。
また、正直診療科にも寄ると思います。
命に直結する診療科であればあるほど、怒鳴るとかの色は強くなっていきそうです。
逆の例で言えば皮膚科で怒鳴られるとかは基本的に見たことがありません。
※皮膚科の人は基本温厚
3つの要素
著者がいうには3つの要素があると明示しています。
医者の三要素
- 惻隠の情
- 手先の器用さ
- 勉強が好きか
惻隠(そくいん)の情=人が困っているのをみて、自分や親のように心を痛めるような心持ち。
言い換えると「思いやり」「かわいそう」「なんとかしてあげたい」ような感情のことのようです。
手先の器用さはわかりやすいですね。
勉強が好きっていうのは正直どういうことなのか曖昧ですが、学問や原因究明をすることに喜びを見出せることと解釈しました。
この3つがあったらあなたは医者に向いていると判断できそうです。
憧れを持つことが大事
「こんな医者になりたい」という憧れをもつことが本著書では大事だと言っています。
憧れとかってよくいうけど、実際なんなんでしょう。
言葉として使うのは簡単です。
詳しくは別記事で書こうと思いますが、憧れっていうのは純粋に「かっこいい」「気がついたらこうありたいと思ってしまっている」、ぼやっとしたそんなものであっていいと思います。
ここに、著者の方が医者をやっていてよかった瞬間を載せておきますので、イメージを膨らませるのに役立たせてください。
いろいろな職業がありますが、仕事を通じて感動できる職業というのは多くありません。医者の場合は、感動できる場面がたくさんあります。患者さんから「ありがとう」と言われただけで、本当に感動するのです。
「先生のおかげで良くなりました」と言われただけで、自分の気持ちがスーッとらくになったという経験もあります。そういう小さなドラマをが味わえるのが医者です。
患者さんが退院して行く姿を見る時の喜びは、本当に嬉しい。
「医者になる人に知っておいてほしいこと」
医者はそんなに稼げない
医者としてお金持ちになる人は、開業医をめざすしかありません。
「医者になる人に知っておいてほしいこと」
世間一般の方が持っている多くのイメージに対する言及でもあります。
これは勤務医でありながらお金持ちになることは難しいという意味です。
著者の方はお金持ちになることをゴールとしてやっていくことも否定はしておらず、また、不可能とはいっていません。
ただ、一方でやりがいがないと厳しい世界だということも注意しています。
自分で主体的に稼いで行くフリーランスという手もありますが、こちらもデメリットがないわけではなく、なんともいえないところです。
「子を医者にさせたい親」問題
医者というイメージが世間一般的に良すぎるせいか、子を医者にならせようとする親がたまにいます。
これはやっぱり問題なことで、著者はこのように注意喚起しています。
「子供に医者になってもらいたい」と思っている保護者の方は世の中にたくさんいます。開業医をしていて、子供に後を継がせたいという方もいるでしょう。しかし、親がどんなに強く願っても、子供がその気になってくれなければ、医者にはなりません。
「医者になる人に知っておいてほしいこと」
「生きがい」として、医者をやらない場合は、医者の世界のつらい面ばかりが見えてきてしまうと思います。
「医者になる人に知っておいてほしいこと」
これはもう、医者に限った話じゃないですね。
子供に「こうなれ」っていっても無理な話です。
またさらに一歩進んでこうも言っています。
その気のない人が無理に医学部にはいることは好ましいとは言えません。そういうことになるくらいなら、医学部に行かず、早めに別の道を探した方が賢明です。人は、いろいろな可能性を秘めています。
「医者になる人に知っておいてほしいこと」
敢えて医者ではなく、医療に関わりたい気持ちを他職種で満たすこともできるということを著書では述べています。
また、医学に興味が向くよう方向に誘導することぐらいはできる、と言っていますが、その場合も子の反応を見ながら、興味がないようだったら無理強いはしないことが重要だそうです。
医者になってはみたけど興味がないとわかった時の選択肢
じゃあ現実問題、医者になってからこの事実に気がついたらどうするか。
修正できるの?ということです。
方法を挙げてみました。
厳しくない医者の道に行く
著者は医者は厳しい職業であることを挫折の壁としていますが、過度に厳しくない道もないわけではないと思います。
それは上でもあげましたが、直接的に命に繋がらない診療科目です。
まあ正直繋げようと思えばだいたい繋がるんですけど、割合の問題になってきますね。
相対的に少ないのが眼科、皮膚科とかになります。
ただ、間接的に命に繋がったり、どの診療科も責任が重要でないわけではもちろんないですよね。
なので、診療自体に自ら厳しさを持たないとあかんので、そう考えると厳しくない道というのは有無は考え方の分かれ目です。
ちょっと我慢してやってみる。やりながら医者の魅力を探す。
上で、『著者が医者にとって本当に嬉しい瞬間』を載せましたが、その瞬間は研修医以下の段階では味わう機会は少ないんじゃないかなとも思います。
学生の頃から自分の身として体験・イメージできるものでもないし、研修医とかの段階で「よし、この人は僕がよくしたぞ」っていう体験できるだろうか?
ぼくはあんまりイメージできません。
考えられるとしたら、超ハイパー病院に行ってバリバリできるようになるか、指導医の先生がそういった経験をさせてあげられるよう工面するか。
ただ、ここで取り上げているのはあんまり医者への魅力を感じたことがない人を対象としているから、そういう人は超ハイパー病院にはいかなさそう。
なのできっと、医者4年目以上とかにならないとわからないんじゃないでしょうか。
なので、ひとまずは頑張ってみて、やりながら徐々に「こういう医者になりたい」というビジョンを作っていく。
そういうのもありかもしれません。
しかしまた同時に、下積み期間で辛いタイミングというのも初期の方に訪れるので、もともとモチベーションがない人はやっぱり大変そうです。
その診療科が向いていることが明確ならば、必要技能という点では比較的楽に乗り越えられるかもしれません。
スパッと諦めて違う道を探す
「ありえない」という人もいそうですが、人生短いからこそこんな道もアリだと思います。
違う道で自分のゴールや憧れを叶えられるのなら、形にこだわる必要はないのかもしれません。
医者に憧れる視点を自分から知りに行く
これは、我慢してやると決めた人も、完全に辞めてしまった人も共通です。
医者っていう仕事の喜びを今まで知らないだけなのかもしれないです。
また、意外と変なところや辛いところを気にして、自分の憧れを隠してしまっていることもあります。
それを思い出すために損得なしに純粋に「すごいな」「かっこいいな」と思った人を思い返したり、会いに行ってみる。
医者への憧れや魅力を実際に語れる人に会ってみる。
長く医者をしている人たちに、なぜ医者に憧れを持ったか聞いてみる。
そうして自分が自然に憧れを持てるか、感じてみるというのも1つの手だと思います。
記事の最後に
いかがでしたでしょうか。
多少参考になっていいただけたら幸いです。
いずれにせよ自分に嘘をつくことなく道を選んで行くことがよさそうですね。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
今回は以上です。