こんにちわ、マツキです
この記事では、ポストフィナステリド症候群について論文から知識を深める目的としています。
ポストフィナステリド症候群は少し問題となっていて、記事内には論文からの(僕からも)注意喚起的な内容が含まれます。
以前、フィナステリドの副作用についての記事を書き、肝障害や生殖器への影響についての記事を書きました。
フィナステリドのメリットや信頼性も含めての話でしたね。
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フィナステリド副作用を検証
マツキこんにちわ!マツキです この記事ではフィナステリドの副作用について取り扱っています。 検証もとは最新版2017年ガイドライン、その根拠となった論文などです。 &nbs ...
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参考文献
医学論文Post-finasteride syndrome: a surmountable challenge for clinicians
(Fertil Steril. 2020 Jan;113(1):21-50. doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.11.030.)
この論文は1989年から2019年8月までの250以上の論文をもとに調査を行なったものです。
こんな方におすすめ
- フィナステリドの内服治療を検討している人
- 今現在フィナステリドを内服している人
ポストフィナステリド症候群とは?
フィナステリドという治療薬をやめた際に患者に現れ、持続する副作用のことです。
この場合、AGAと前立腺肥大症といった治療に用いられたフィナステリドをさします。
AGA治療にはフィナステリドはよく用いられるので、AGA治療の合併症という見方をすることもできます。
ポストフィナステリド症候群でどんな症状が出る?
以下の3つに大きく分けられます。
ポストフィナステリド症候群の大きな分類
- 性症状
- 神経精神症状
- 身体的な症状
それぞれに多彩な症状が出るようです。
報告されているものとしては少なからず以下の通りです。
性症状
・男性不妊
・勃起障害
・性欲減退
・射精障害
・陰茎サイズ減少
・女性化乳房...etc
神経精神症状
・疲労
・抑うつ、不安
・認知機能障害
・自殺企図・自殺...etc
身体的症状
・乾燥肌(皮膚)
・筋萎縮(筋肉)
・白内障(眼)
・虹彩緊張低下症候(眼)
・T細胞性急性汎発性発疹性膿疱症(皮膚)
・偽ポルフィリン症(その他)...etc
ポストフィナステリド症候群は治るの?
残念ながら今のところ、有効な治療法がみつかっていないというのが現状です。
何が問題なの?
この論文の概ねの内容は以下になります。
- ある研究で、どの程度の副作用をもつ患者が、何%存在していたか
- それらをポストフィナステリド症候群としての証拠としてどう評価できるか
しかし、それと同じぐらいにそもそも論を問題として挙げています。
根本的な問題
それは以下に挙げる問題です。
副作用がずっと続いている男性が増加しているにもかかわらず、日本を含めて医学界がまだこの症候群を認識していない現状があること
※フィナステリド治療自体や治療している方・クリニックを否定しているわけではないことは断っておきます。
今まで安全だとされてきて、広く用いられてきたフィナステリドによる治療でした。
その現実の一方で、先ほど挙げたような副作用のリスクが上がると結論付けた研究がとても多いという調査結果であったということです。
フィナステリドの有害性の今までの調査
自殺企図(自殺しようとすること)や男性不妊といった、生きていく上で大変な副作用もあります。
その中で「これらのフィナステリドの有害性に関する今までの調査は不十分であった」とも言われています。
そうなると少なくともフィナステリドが安全で副作用がない薬として扱っていくことは今後難しくなっていくことが予想されます。
アメリカに財団が存在する
本論文とは関係ないですが、一応海外にはポストフィナステリド症候群の財団があります。
ポストフィナステリド症候群のメカニズムや治療法、この疾患に苦しむ人々へのサポートを目的とした財団です。
本社はアメリカのニュージャージー州サマセットであり、2012年7月に設立された非営利団体です。
自分に副作用がでているかを当てはめてみる
自分の内服事情
僕自身もフィナステリドを1日1g内服しています。期間的には2年を超えるところですね。
内服のきっかけ
そんなに気になるほどの脱毛っぷりではなかったのですが、大学ぐらいからAGAの兆候を感じていました。
AGAの原理や放っておけば進行する仕組みは理解していて、それなりに悩みもしたので内服を始めたのです。
副作用は少ないという説明は受けましたが、医学を学んでいる身なので「ホルモン系の薬を長期間内服するということは体に何かしらの変化が起きてもおかしくはない」ことはイメージできていました。
自身の副作用の印象
自分の副作用に関しては、正直わかりません。
論文で強調される性症状については、わずかにですけど勃つの少し弱くなったかな?ぐらいです(恥)
他には「気がする」程度のものですが、酒が弱くなったとか、めまいが起きたこともありました。
めまいについては一時的ですし、これがフィナステリドの副作用によるものなのか、断定するのは難しいと思います。
幸い大丈夫な方かと胸をなでおろしつつも、ポストフィナステリド症候群の存在を知ってからは症状に敏感になってはいるつもりです。
今後の予想などなど
ポストフィナステリド症候群を改めて知ってみると、内服に関しては軽はずみにすべきではないといえます。
論文以外のところからそう感じた理由もあります。
それはフィナステリドの処方は医師が適正かどうかをしっかり見定めているというより、患者自身が処方を希望する場合が多いからです。
薬の副作用も「一通りは説明した、後は自己責任。」といった形が多い印象を受けました。
こういった背景にはやはり、AGAクリニックでの処方の普及があります。
自分の身は自分で案じよう
医療の美容領域では「患者自身が審美さを求めて受診する」というのがベースです。
ただ、ちゃんと副作用についての知見を更新し、リスク説明を行っているところばかりとは限らないでしょう。
少なからず、ぼくは処方の時にポストフィナステリド症候群の説明を受けてはいなかったです。
クリニックに行けば処方はしてもらえる可能性は高いですが、安易に考えるべきではないと思われます。
クリニックの対応はどうなるか
論文をからは、ポストフィナステリド症候群は少ない確率であっても発症すること、かつ、それが持続するものであることがわかりました。
これが本当に治らない病気なのであれば、大変な問題です。
若く、健康的な男性が治すべきはずの薬によって、長く苦しむことになってしまうからです。
ポストフィナステリド症候群が医療界で問題視されていることをふまえると、この病気の危険性が認知され始めた時、今まで通りの副作用の説明や処方の敷居の低さはなくなっていくんじゃないかなと予想されます。
クリニックでの対応も変わっていくことが考えられます。
じゃあ今後どうすべきか
ただ実際、AGA治療としてはフィナステリドが現状有力なのも確かな事実なのです。
それを踏まえると、今後は以下のようなことが重要になってくるんじゃないでしょうか。
- 処方によるメリットとデメリットのバランスを医師側がしっかり提示する
- 患者側も本当にフィナステリド治療が必要か考える
- 内服後も副作用の発症を懸念しつつ、経過を慎重にみていく
- ポストフィナステリド症候群自体の解明が進み、対応策が練られる
- フィナステリドのようなホルモン製剤に代替するAGA治療のベストな選択肢の研究が進む
僕自身、論文に目を通し、ポストフィナステリド症候群について知見を記事としてフィードバックしていければと思っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
今回は以上です。
参考文献
医学論文Post-finasteride syndrome: a surmountable challenge for clinicians
(Fertil Steril. 2020 Jan;113(1):21-50. doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.11.030.)
この論文は1989年から2019年8月までの250以上の論文をもとに調査を行なったものです。